◆「日本で学ぶすべての生徒に公平に教育の機会を与える」
高校の授業料無償化の対象から朝鮮学校を外した国の処分について、大阪地裁は7月28日、国の処分を違法とする判決を言い渡した。北朝鮮の脅威が繰り返し報道される中で、「日本で学ぶすべての生徒に公平に教育の機会を与える」という無償化制度の原点に立った内容だった。国は8月10日、この判決を不服とし、大阪高裁に控訴した。(矢野宏・新聞うずみ火)
裁判所の外で判決結果を待つ支援者たちに「勝訴」を伝える原告弁護団が手にした垂れ幕には「行政の差別を司法が糺す」と書かれていた。
法定内では勝訴が告げられた次の瞬間、傍聴席、弁護団席も総立ちとなり、抱き合い、手を取り合って喜び合ったという。「朝鮮高校無償化裁判大阪弁護団」団長の丹羽雅雄弁護士は「長い間、いろんな裁判をしてきたが、こんな光景を見るのは初めてでした」と振り返る。
「高校無償化法」は民主党政権下の2010年4月に施行された。「教育にかかる経済的負担の軽減をはかり、教育の機関均等に寄与する」という趣旨のもと、朝鮮学校を含む外国人学校も適用対象となる。
その年の11月に朝鮮学校が適用を申請したところ、「待った」がかかる。「拉致問題が解決していないのに」という理由から保留となったのだ。さらに、北朝鮮による韓国・大延坪島(テヨンピョンド)砲撃事件で適用が見送られたまま、12年12月に自民党の安倍政権が発足。下村文部科学大臣が「拉致問題と進展がない。在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)と不適切な関係にあり、国民の理解は得られない」と述べ、朝鮮学校を無償化の対象から外す処分を下した。
高校無償化は公立学校では授業料を徴収せず、私立学校の場合、生徒に就学支援金を支給する制度だ。中華学校やブラジル人学校など40余りの外国人学校が無償化の対象となっているのに、国が申請を認めなかったのは朝鮮学校だけだった。
このため、朝鮮学校の生徒や学校法人が処分の取り消しなどを求め、大阪、東京、広島、名古屋、福岡の5地裁に提訴した。
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