最初に判決が下されたのは広島地裁だった。広島朝鮮初中高級学校を運営する学校法人「広島朝鮮学園」と元生徒ら110人が処分の取り消しや慰謝料を国に求めた裁判で、広島地裁は7月19日、処分を下した文科大臣の判断について「国の判断に裁量権の逸脱、濫用があるとは認められない」と原告敗訴を言い渡した。
あれから10日、大阪では正反対の判決が出たことについて、丹羽弁護士は「高校無償化法の立法趣旨に立っているか否かの違いだ」と指摘する。
「この法律の趣旨は日本で学ぶ若者に教育を補償すること。各種学校の外国人学校も含む民族的、文化的マイノリティーの子どもたちの権利をも国が補償していくものです。そういう平等原則でものを考えるのか、北朝鮮や朝鮮総連に連なる朝鮮学校という冷戦構造に視点を置いて『不当な支配を受けている』と判断するのか。大阪地裁判決は、『教育の機会均等』という立法趣旨から国の行為を判断しようとした、その違いです」
それゆえ、大阪地裁は「外交的、政治的意見に基づいた文部科学大臣の判断は、高校無償化の趣旨を逸脱しており、違法だ」と結論付けた。しかも、「国側が主張する朝鮮総連による不当な支配の有無を判断する裁量は文科大臣には与えられていない」とも言及、「これを認めれば、行政権力の教育への介入を容認することになる」とした。
その朝鮮総連との関係についても判断が分かれた点について、丹羽弁護士は「広島地裁判決では、朝鮮総連が朝鮮学校の教育内容や財政に密接に影響を及ぼしており、朝鮮学校が適正に運営されていない恐れがあるという国の主張を全面的に認めたが、大阪地裁判決では『合理的根拠の立証がない』として退けた。その上で、学校法人が財産目録や財務諸表を作り、理事会なども開いており、運営の適合性も認めたのです」と説明する。
さらに、丹羽弁護士は「訴訟の進め方にも大きな違いがあった」と指摘し、こう言い添える。「大阪地裁では、原告である学校法人の理事長や卒業生、元教員らを証人として採用して当事者の声に耳を傾けたが、広島地裁は原告である110人の生徒の誰一人として意見を聞こうとしなかった。裁判官がどういう目線で見ているか推測されます」(矢野宏・新聞うずみ火)
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