中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会が開催した6月24日の集会で、アスベスト除去工事を1990年代から監視してきた分析技術者が実態を語った。技術者の語るアスベスト測定の20年から現在の課題が透けてみえる。(井部正之)
◆20年ちかくアスベストを測定
講演したのは建築物石綿含有建材調査者協会(貴田晶子代表理事)の小坂浩理事。小坂氏はもともと兵庫県の公害研究所に勤務し、20年近くアスベストの測定をしてきた。
小坂氏によると、空気中のアスベスト測定に関わるようになったのは1989年からという。当時環境庁が初めて全国のアスベストモニタリング調査を開始したころで、試料の採取や顕微鏡による分析にたずさわった。
その6年後、1995年に阪神・淡路大震災が起き、建物解体などにおいてアスベスト対策がきちんと行われていないことが実際の測定値も含めて市民団体から指摘され、大きな問題になった。その結果、1996年兵庫県は全国で初めて、建物のアスベストの除去や建物解体の際、届け出をするよう「環境の保全と創造に関する条例」に義務づけた。
同県はそれ以降、届け出のあったすべてのアスベスト除去現場で周辺などで飛散がないか同研究所に測定させた。小坂氏は2007年に退職するまでその業務で測定・分析にかかわってきた。
「最初は地方の事務所にサンプルをとってきてもらって測定した。そうすると(分析が終わると)夕方になる。工事が終わってしまう。
それで実効性を高めるため、私たちが現地で採取して、すぐ持ち帰って分析するようにした」と小坂氏はいう。
分析結果が出た段階でアスベストの周辺への飛散が確認できたとしても、1日で除去が終わってしまうような現場だと夕方には工事が終わってしまっていて、改善させることもできない。それで朝イチにサンプルを採取して、すぐ分析し、午後には分析結果を出すようにした。
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