◆通告した測定で約半数が漏えい
こうしたアスベスト除去工事における周辺への飛散事故について、兵庫県内での状況は次のようなものだった。

「1997~2004年度、クボタショックの前までは約20%で漏えいしていた。2005年クボタショックで除去工事が急に増えた。それまで(届け出せず)“闇”でやってたんだと思いますね。(クボタショック以降)急に件数が3桁になったが、漏えい比率は10件に1件くらい」(同)

およそ10%の漏えい率である。

実はこれは1リットルあたり10本を超える漏えいのみであり、1リットルあたり1本超でみると漏えい率は59%に跳ね上がる。しかもおそろしいことに、そうした状況はいまも続いているという。

「環境省のモニタリングでもけっこう漏えいしている」と小坂氏はこともなげに話す。同省のアスベスト調査検討会で委員を務める小坂氏はそういって、2010年以降の測定結果をみせた。それによると、同省は2010~2016年度で計53か所のアスベスト除去工事において測定しており、そのうち1本超の飛散があった現場はじつに26か所と約半数(49%)に達するというのだ。

兵庫県における2004年度までの1本超の漏えい率59%よりわずかにましではあるが、いまだ約半数で飛散しているというのは衝撃的だ。

漏えいの原因は負圧除じん装置の管理が悪いことによる不具合と負圧不足が圧倒的に多い。いまだアスベスト除去工事の基本が適切に守られていないということだ。

この結果から小坂氏は「かなり全国でずさんな工事が行われていることが想像できる」と明かした。

同省のモニタリングは自治体から測って欲しいと要望があり、除去業者が同意した場合に実施している。しかもいつ測定に行くかも事前に通告している。当然、現場側はきちんと準備して待っている。

にもかかわらず、半数近くでアスベストの漏えいがあるのだ。それだけ除去業者の実力がないこと、そして、普段はもっとひどい工事が行われているだろうことがうかがえる。とんでもない話である。

この調査結果は検討会の中でも公表されているが、今回のような現状分析がされておらず、危機感を持っている委員はほとんどいないという。

後に小坂氏に聞いたところ、「みんな知っているけど議論にもならない」と呆れたようすだ。

これが適正なはずのアスベスト除去工事の実態である。2028年にはアスベスト建材を使った建物の解体ピークを迎えるという。いままさにアスベストが使われた建物の解体は増えている。規制強化と現場のレベルアップ、監視の強化が急務である。(了)【アジアプレス/井部正之】

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