国連人権理事会の特別報告者のジョセフ・カナタチ氏(2017年6月30日スイス・ジュネーブで撮影:藤田早苗)

2017年5月以降、二人の国連特別報告者からの勧告と日本政府の対応が日本のメディアのみならず、海外の主要メディアにも取り上げられて話題となっている。その勧告とはデビッド・ケイ氏(表現の自由)が2016年4月に行った日本公式調査の報告書(翌年5月に公開)と、ジョセフ・カナタチ氏(プライバシーの権利)による政府にあてたいわゆる共謀罪に関する書簡についてである。ケイ氏はカリフォルニア大学アーバイン校の教授、カナタチ氏はマルタ出身で現在オランダのフローニンゲン大学の教授で、筆者はケイ氏の日本公式調査訪問をサポートし、カナタチ氏とも話し合いを重ねるなど、両特別報告者への情報提供と意見交換を続けてきた。2017年6月の人権理事会も傍聴し、その後両氏とそれぞれ再度意見交換する機会があったので、それらを踏まえて報告をしたい。(藤田早苗)

◆国会で審議中の秘密保護法案を英訳し、国連特別報告者に通報
国連特別報告者は、人権理事会に任命され、特定の国や地域における人権状況や、テーマ別の人権状況について調査、報告、勧告などを行う。国連職員ではなく報酬はない。そして出身国の代表でもない独立の専門家である。2017年8月現在44のテーマと12か国についてそれぞれに専門家が任命されている。

特別報告者からの日本の表現の自由に関する勧告は、2013年の秘密保護法に始まる。国会で審議中の法案を筆者は友人と英訳し、2013年10月、特別手続(※1)の通報制度を通してこの法案の危険性を表現の自由に関する国連特別報告者に通報した。

この法案は専門家との意見交換、コンサルテーションなど、本来民主国家が法案作成過程で行うべきプロセスを欠き、秘密指定の基準が曖昧で、内部告発者の保護や独立監視機関など、国際人権法が定める情報の自由に関する基準から見て問題も多く、人々の「知る権利」に悪影響を及ぼすと懸念したからである。

※1特別手続は、特別報告者などがNGOや被害者などからの情報を活用して人権侵害に対処する手続き。
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