外務省の「国連人権理事会『プライバシーの権利』特別報告者の指摘に対する回答」(HPより)

 

◆アピールと勧告無視

この17年ほど筆者は国連人権機関の会議を傍聴してきたが、近年、国連勧告への日本の対応に懸念が高まっていることを感じる。2014年の市民的、政治的権利に関する国際規約(自由権規約)の審査で議長に「日本は何度同じ勧告をしても従おうとしない。これでは資源の無駄遣いだ」と痛烈な批判を浴び、当初2015年12月に合意されていたケイ氏の調査訪日が日本政府の都合で急遽キャンセルになった時にも、国際人権の関係者から「まるで独裁国家のようだ」と呆れられる始末だった。(藤田早苗)

カナタチ氏の書簡から間もなく、5月28日に複数の新聞で安倍首相が国連のグテレス事務総長と主要国首脳会議(サミット)の会場で約10分間、会談し、グテレス国連事務総長がテロ準備罪法案を巡り、国連人権理事会の特別報告者が懸念を伝える書簡を首相に送ったことについて、「必ずしも国連の総意を反映するものではない」との見解を明らかにした、という報道がされた。

しかし国連側のプレスリリースには「特別報告者について、事務総長は首相に、特別報告者は国連人権理事会に直接報告をする独立した専門家であると説明した」とだけあり、「国連の総意を反映」云々は含まれていないため、その違いがネット上でも話題になった。この点について5月30日の事務総長スポークスマンへの記者会見で日本テレビの記者が質問し、事務総長が言ったことはプレスリリースにあるとおりである、と確認している。
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