一方、政府は2017年5月30日の閣議決定で「特別報告者の見解は、当該個人としての資格で述べられるものであり、国際連合又はその機関である人権理事会としての見解ではないと認識している」という見解を示したのだが、これは日本政府自身の国際社会への以下の宣言などとも矛盾するように思われる。
2016年、日本は人権理事会の理事国として再選され、2017年1月1日から3年間にわたり理事国を務めることとなったが、同年7月、理事国選挙に際して公表した「世界の人権保護促進への日本の参画」では「国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)や特別手続の役割を重視。特別報告者との有意義かつ建設的な対話の実現のため,今後もしっかりと協力していく」と宣言しているのである。
加えて、2017年4月には、北朝鮮の人権状況に関する前特別報告者(2010年8月から2016年7月)のマルズキ・ダルスマン氏に旭日重光章を叙勲している。そして6月の人権理事会では新たに「ハンセン病に関する特別報告者」が設置されたのだが、そのイニチアチブは日本政府であり、その貢献をアピールしている。
特別報告者は日本を含めた人権理事会から任命されているため、その発言は、権威、地位、正当性をもっている。国益に沿うものや理事会での影響力を発揮できる分野は重視する一方、気に入らないものは無視、または抵抗し抗議するというのは、国連の人権制度を認めないというに等しいと受け取られるであろう。つまり理事国としての適性を評価されるときにも影響するだろう。日本に対する勧告に対し、内容以前に国連特別報告者という立場に対して懐疑的であるかのような態度を示すのは、これまでの日本政府の姿勢とも矛盾するのではないか。(3 続きを読む>>)【藤田早苗】
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藤田早苗(ふじた・さなえ)
エセックス大学人権センターフェロー。同大学にて国際人権法修士号、博士号取得。名古屋大学大学院修了。秘密保護法、報道の自由、共謀罪等の問題を国連に情報提供、表現の自由特別報告者日本調査訪問実現に尽力。
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