◆「時間がない」中皮腫患者の訴え

被害者団体、中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会が6月24日、兵庫県尼崎市で開催したアスベスト被害の根絶と被害者の公正な救済を訴える集会で、国は最大限のアスベスト被害防止に取り組むべきと訴える元尼崎市議で中皮腫患者の塩見幸治さん(撮影:井部正之)


国は今後のアスベスト被害防止に徹底して取り組め──。被害者団体、中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会が6月24日、兵庫県尼崎市で開催したアスベスト被害の根絶と被害者の公正な救済を訴える集会における中皮腫被害者が訴えた。(井部正之)

「4月に胸膜と心膜に再発しました」

2015年1月、胸水がたまっていたのを抜いた際に胸膜中皮腫と診断された元尼崎市議の塩見幸治さん(66歳)はそう話し始めた。

中皮腫は肺や心臓などを覆う膜などにできる特殊ながんでほとんどアスベストを吸ったことが原因とされる。予後が悪く、発症から1~2年で亡くなることが多い。

塩見さんは同5月には右肺と右胸膜すべて、さらに横隔膜や心膜、交感神経、副交感神経の一部を切除する手術を受けている。

それから病状は安定し、昨年の集会でも石綿スレート工場周辺の被害とみられる自身の健康被害について報告していた。それから1年、中皮腫が再発したという。

「心膜中皮腫の影響で心臓に水がたまり、急遽水を抜く処置を受けた。それから息切れがはげしい。再発しましたので、私もあまり時間がない」

塩見さんはそう前置きして続けた。

「私たちの病気は、これは悔しいことだけど、取り返しがつかない。30年、40年、50年前に(アスベストを)吸っている。いまから(原因を)分析しても無駄だ。だから、被害者が何を訴えたいか。私たちがアスベスト被害で病気になって死んだ。そういう意味を社会的にふまえてほしい。理解してほしい。そういうことを社会とか、国に訴えたいです」

会場からは、呼吸器疾患をわずらう人が多いせいだろう。相変わらず、咳き込む音が聞こえてくる。

「多くの方が(アスベスト被害で)亡くなっている。そういう被害者に向き合うのがどういうことか。国とか社会ができることありますよね。学者とか一部を除いては、危険なものだと40年50年前は知らなかったかもしれない。だけど、いまは違います。危険だとわかっていて、規制もしている。私たちの身体を元に戻してくれと言っても無理だろうけど、これから被害者を出さないことはできる。20年後、30年後、40年後、新たな被害者を出さないことはできる。せめてそのことに向き合ってくれることが、私たちの被害に向き合ってくれる。そういうことなんです」

塩見さんはそういって昨年環境省の石綿健康被害救済小委員会で給付拡大を求めて発言したり、同省の担当者が尼崎を初めて訪れて、被害者から直接話を聞いた時のことなどに触れ、次のように感じたという。
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