今年は凶作
今春以降、北朝鮮内部の取材パートナーたちから農村で起こっている二つの深刻な事態について続々報告が届けられた。その一つは凶作である。北部地域の両江道(リャンガンド)、咸鏡南北道(ハムギョンナムプクド)に住む協力者たちに、実際に農場に行ってもらい調べたところ、「今年は凶作。トウモロコシも稲も全滅に近い農場もあった」と口を揃える。
凶作が予想される一番の理由は、5~6月のひどい干ばつだ。さらに7月に大雨が降り、「立ち枯れした畑にわずかに残ったトウモロコシも水浸しになっていた」(咸鏡北道の協力者)。
穀倉地帯である南西部の黄海道(ファンヘド)には直接行けていないが、「黄海道の作況は北部より酷い」と国内では囁かれている。6月28日付けの朝鮮中央通信は、労働党の崔龍海(チェ・リョンヘ)副委員長が、黄海南道(ファンヘナムド)の干ばつ状況を視察したことを報じている。
生産者の農民が飢えている
農村で発生しているもう一つの深刻な事態は農民の困窮だ。咸鏡北道の取材パートナーの一人に、親戚にいる協同農場に調査に行ってもらったところ、次のようなショッキングな報告が届けられた。
「昨年の分配(収穫時の農民の取り分)を春に食べ尽くした農民たちが大勢いる。絶糧状態の世帯もある。農場の幹部が農場員の家を回って出勤するよう叱責しても、『食べ物もくれないのにどうやって働くのか』と反発される有様だ。トウモロコシ畑は草取りもされず雑草が伸び放題だった。農民たちは秋の収穫後に返済する約束で農場幹部から食糧を『前借り』するが、これには利子がつく。商売人と組んで市場で食糧を購入して農民に貸し付ける悪辣な幹部もいる。秋の収穫後に二倍にして返すのが相場だ」
両江道の農村に住み本人は商売をしている女性は、「農場員の中でも、夫のいない家庭、老人、病人のいる世帯では栄養失調で亡くなる人も出ている」と、窮状を伝えてきた。
ところが、都市部のどの公設市場でも、コメやトウモロコシは溢れんばかりに売られている。なぜ生産者の農民が飢えるのか? 搾取のせいである。
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