軍幹部が備品と食糧横流し
北朝鮮社会一般では食糧難はほぼ解消されている。にもかかわらず、人民軍には現在も栄養失調が蔓延しているわけだが、財政難の他に軍内の不正腐敗もその大きな原因だ。支給された食糧を軍幹部たちが現金欲しさに市場に横流ししてしまうため、末端の兵士にまで食べ物が行き渡らないのだ。息子・娘が入隊とすると、心配する親たちはせっせと面会に通って差し入れをしたり仕送りをしたりしている。
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金正恩政権は、勇ましい軍事パレードやミサイル発射映像を使って、しきりに「軍事大国」を演出・アピールすることに余念がない。だが、その実態を誰より知っている庶民の間では「戦争をできる軍隊はどこかに隠してあるそうだ」というジョークが流行っているという。
国連安保理は、核、ミサイル実験を重ねる北朝鮮に対して経済制裁を強化し、主要な外貨稼ぎ品目の石炭、鉄鉱石、水産物、繊維製品の輸出が全面禁止された。貿易収入の80%を失う収入減になる。
金正恩政権にとっては痛手に違いないが、統治資金、核・ミサイル開発資金は優先的に確保するだろう。今年の凶作と相俟って、来年初め頃から、経済難のしわ寄せが、農民と一般民衆とその息子、娘たちである末端の兵士に転嫁されることになるだろう。(了)
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(石丸次郎)
※週刊金曜日9月15日号に掲載された拙稿を加筆修正しました。
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