◆幼な子抱え、シリアから再びトルコへ、そして海を目指す
トルコ政府はシリア難民がやってくることは歓迎しませんが、逆にシリアに戻ることについては、むしろ歓迎しています。トルコからシリアへ戻るのは身分証明書さえ見せれば簡単でした。しかし、シリアからトルコへ渡るのは基本的に、非合法で行くしかありません。国境は草原が広がっているだけですが、トルコ軍の埋設した地雷もあるため、素人の私たちだけで越えることはできません。密輸や、ひそかに人の行き来を手配するブローカーにお金を払い、彼らの案内で鉄条網を切断し、闇夜の中、私と家族、知人の計5人で国境を越えました。みんなそうやって国境を越えます。
そこにはトルコの警備隊が目を光らせており、発砲される危険もありました。ブローカーが自分たちを裏切るかもしれない、という考えもよぎりました。少しの服と身の回り品が入ったカバンを肩にかけ、娘を抱えながら体の震えが止まりませんでした。たった数百メートルの国境地域を抜けるのに4時間もかかりました。なんとかトルコ側に入った私たち家族は、バスなどを乗り継ぎ、3日間かけてトルコ西部の大都市イズミールにたどり着きました。そこには別のブローカーが私たちを待っていました。(つづく)
>>>(2)トルコ西部の海沿いの町~ヨーロッパ目指す難民たち
>>>(3)ギリシャの島に漂着~携帯GPS頼りに村めざす
>>>(4)ギリシャに殺到する難民、極度のストレスも
>>>(6)ハンガリー、オーストリアを越えドイツに
>>>(7)ドイツでの生活を始める
>>>(8)シリアの今後はどうなるのか
>>>(9終)「豊かさを求めて難民になったのではない」
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