シリア・コバニ出身でアル・バヤン紙元特派員のフェルハッド・ヘンミ記者(31)と家族は、2015年9月、武装組織イスラム国(IS)の包囲が 続くシリアから密かに国境を越え、トルコに入り、ヨーロッパを目指した。エーゲ海に面するトルコ西部の都市イズミールにたどり着くと、そこはイラク、アフ ガニスタンなど世界中からヨーロッパを目指す難民たちでいっぱいだった。かれらはボートに乗り海を越えてギリシャに向かう。ヘンミ記者に電話で直接話を聞くシリーズの3回目。今回アーカイブとして掲載する。【聞き手:玉本英子】
(※2015年初出のアーカイブ記事。情報等は当時のまま)
◆島に到着~7時間歩きどおしで村を目指す
私たち難民35人は、トルコでゴムボートに乗り、ギリシャへ向けて、海に乗り出しました。背後には、あとにしてきたトルコ側の村の明かりが、かすかに見え ました。しばらくすると前方に、ギリシャの島が見えてきました。時計で計っていたので忘れもしません。ちょうど1時間40分かかりました。それでも、何時 間も乗っているように、私には感じられました。
真っ暗な海を越えて、私たちは、ある島の浜辺に着きました。小さな娘たちを抱きしめながら、助かってよかったと、心の中で何度も何度も思いました。 ゴムボートでの移動が、行程のなかで一番危険でしたから。多くの人がここで命を落としています。正直、死ぬ覚悟をしていました。なんとか越えられたと、み んなの間にも安堵感が広がりました。
次のページへ ...