そのため2016年3月以降、被害者団体「中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会」(小林雅行会長)らが何度も個別に被害者に周知するよう要請してきた。しかし、厚労省は「誤解や混乱を招く」などとして拒否し続けた。

国は否定するが、そうした不誠実な対応に「国は時効による請求権の喪失を狙っているとしか思えない」との声が上がるのは当然だろう。その後この問題が国会でも取り上げられるなどして、ようやく厚労省は個別に周知するとの方針に転じた。

「家族の会」事務局の片岡明彦氏も「被害者団体からいわれて、3年近く経ってやっと(個別周知を)やるんでしょ。塩崎(恭久厚生労働)大臣が泉南に来て謝罪までしていて。こっちがいう前からやらないといかんのじゃないですか。基本姿勢がなってない」と批判する。

おそらくは国のリークだろうが、発表前日の10月1日に朝日新聞が“スクープ”し「厚労省が異例の対応」と書いたため、翌2日に一斉に「異例の通知」「異例の呼び掛け」などと追いかけた(厚労省はリークを否定)。国の都合の良い発表に見事踊らされた格好だ。

今回の発表は本来なら最高裁判決後にすぐ実施すべきだったものが3年遅れになったにすぎない。本来なら「異例の対応」と持ち上げるより、「3年遅れの対応」と批判も含めて報じるべきところだろう。

片岡氏はこうも言っていた。

「なんで被害者団体にいわれてようやく実施が決まって、3年も通知が遅れているのに、国が良いことを自らやったかのようにマスコミは報じるのか。そんなんだから厚労省に舐められるんだよ」

なお、毎日新聞だけは過去の経緯にも若干触れており、見出しも異なることを付記しておく。【井部正之/アジアプレス】

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