◆都議会での質問が発端
追悼文取りやめの発端は3月議会での古賀俊昭都議(自民)の質問だった。古賀都議は、虐殺を否定する書籍を引きながら「独立活動家が震災に乗じて凶悪犯罪を行った。そうした犯罪を行った朝鮮人が殺された。だから自警団の過剰防衛だ」などと持論を展開。式典の案内状にある「6千余名」「虐殺」の文言を問題視、「歴史を歪める行為に加担する」として、追悼文送付の再考を求めた。
これに対し知事は「適切に判断する」と答弁。8月25日の会見で、追悼文は送らないと発表した。虐殺の認識について問われると「さまざまな歴史的な認識があろうかと思う」とはぐらかし、「虐殺否定論」を否定しようとしなかった。
宮川さんらは「6千余名」という被害者数の推定をめぐる議論は見せかけで、「本質は、虐殺の事実そのものの否定」だとみる。
◆否定派の「慰霊祭」
この日、追悼式典がピリピリした空気に包まれていたのは追悼文問題だけが理由ではなかった。
公園内の目と鼻の先の場所で、同時刻に、もう一つの「慰霊祭」が行われていたのだ。「真実の関東大震災石原町犠牲者慰霊祭」。石原町はかつて横網町に隣接していた町名で、住民の多くが火災の犠牲になったとされる。だが、警官や都職員が固める人の壁の隙間からは「6000人虐殺は本当か」「日本人の名誉を守ろう」の文字や「日の丸」が見え隠れしていた。
「慰霊祭」を主催したのは、在特会とも関連があるとされる女性グループ「そよ風」。主催者によれば昨年夏からJR両国駅前で追悼碑撤去を求める街宣をはじめたという。「慰霊祭」は都の公園使用許可を受け、今年初めて開催された。「そよ風」は、小池知事の追悼文拒否が明らかになると、ブログで「大英断」と賞賛している。([中]続きを読む>>)
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