シリア・コバニから脱出、ドイツの難民収容施設にたどりついたばかりのフェルハッドさんの娘たち。(フェルハッドさん撮影:2015年9月)
シリア・コバニから脱出、ドイツの難民収容施設にたどりついたばかりのフェルハッドさんの娘たち。(フェルハッドさん撮影:2015年9月)

シリア難民で元アラブ紙特派員のフェルハッド・ヘンミ記者(31)はドイツを目指し、家族とともにヨーロッパの国々を縦断する。シリア脱出後、トルコ、ギリシャ、マケドニア、セルビア、ハンガリー、オーストリアを越えた一家は、ついにドイツに入った。電話でのインタビュー記事を、今回、アーカイブとして掲載する。聞き手:玉本英子】

◆戦火から逃げのび、救われた命
ハンガリーへ入国した私たちが、次に目指すのはオーストリアです。再び故郷コバニ出身のシリア人20人ほどと一緒に行動することにしました。列車に乗り、首都ブダペストを経由して、オーストリア国境へ向かいます。

しかし、駅は何千人もの難民でごった返していました。これからどうなるのか、みんな不安でたまらなかったのでしょうか。チケットなどをめぐって、あちらこちらで、いさかいが起きていました。大声で叫んだり、泣きわめいたり、殴り合いのケンカをしたり......。その姿に、私は悲しい気持ちでいっぱいになりました。あまりの人数に、警察も対応できない様子でした。

フェルハッドさん一家の脱出行は20日に及んだ。戦火のシリアから逃れるため、トルコに有刺鉄線を越えて越境、ギリシャには闇夜にゴムボートで漂着した。その後、ヨーロッパ大陸を縦断しながら親戚のいるドイツにたどり着いた。
フェルハッドさん一家の脱出行は20日に及んだ。戦火のシリアから逃れるため、トルコに有刺鉄線を越えて越境、ギリシャには闇夜にゴムボートで漂着した。その後、ヨーロッパ大陸を縦断しながら親戚のいるドイツにたどり着いた。地図作成:アジアプレス

それでも、私たちはなんとかチケットを買うことができ、ウィーン行きの列車に乗りました。しかし、窓の外の景色などを見る余裕などありません。私はずっと警戒していました。強盗やスリがいるからです。彼らは難民が大金を身につけていることを知っています。私たちは、お金を靴の中や体のいろんな場所に隠すのですが、そんなこともよく知っているのです。ナイフを突きつけられたらどうすればいいのか、そんなことばかり考えていました。
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