シリア難民で元アラブ紙特派員のフェルハッド・ヘンミ記者(31)はドイツを目指し、家族とともにヨーロッパの国々を縦断する。シリア脱出後、トルコ、ギリシャ、マケドニア、セルビア、ハンガリー、オーストリアを越えた一家は、ついにドイツに入った。電話でのインタビュー記事を、今回、アーカイブとして掲載する。【聞き手:玉本英子】
◆戦火から逃げのび、救われた命
ハンガリーへ入国した私たちが、次に目指すのはオーストリアです。再び故郷コバニ出身のシリア人20人ほどと一緒に行動することにしました。列車に乗り、首都ブダペストを経由して、オーストリア国境へ向かいます。
しかし、駅は何千人もの難民でごった返していました。これからどうなるのか、みんな不安でたまらなかったのでしょうか。チケットなどをめぐって、あちらこちらで、いさかいが起きていました。大声で叫んだり、泣きわめいたり、殴り合いのケンカをしたり......。その姿に、私は悲しい気持ちでいっぱいになりました。あまりの人数に、警察も対応できない様子でした。
それでも、私たちはなんとかチケットを買うことができ、ウィーン行きの列車に乗りました。しかし、窓の外の景色などを見る余裕などありません。私はずっと警戒していました。強盗やスリがいるからです。彼らは難民が大金を身につけていることを知っています。私たちは、お金を靴の中や体のいろんな場所に隠すのですが、そんなこともよく知っているのです。ナイフを突きつけられたらどうすればいいのか、そんなことばかり考えていました。
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