内戦が続くシリアから脱出し、家族とともに難民としてドイツにたどり着いたアラブ紙元特派員フェルハッド・ヘンミ記者(31)。故郷のコバニは武装組織イスラム国(IS)と地元クルド組織の攻防戦で瓦礫の町となった。シリアはどうなるのか、人びとは何を求めているのか、電話でのインタビュー記事を、今回アーカイブとして掲載する【聞き手:玉本英子】
(※2015年初出のアーカイブ記事。情報等は当時のまま)
◆希望のないシリアの現実
私は、やっとのことで、ドイツにたどり着いたのですが、毎日のように故郷コバニのことを思い出しています。悪夢にうなされることもあります。砲撃と空爆で破壊され、瓦礫が広がる町。クルド組織の徹底防衛戦でISを一時撤退に追い込んだものの、いまも包囲は続いています。近郊では自爆攻撃も起きています。大人の私でさえ、精神的に参ってしまっているのに、どうして幼い娘たちの未来をそこに託していけるでしょう。
シリアは中東のまん中にあり、政治的、地理的にも重要な位置にある国です。ゆえにいくつもの大国、ロシア、アメリカなど、それぞれの国が自分たちの利害で動き、対立が続くだけの状況となってきました。大国は思い思いに領土を空爆し、各派に武器を供与する。その結果、ISは国外にまで様々な事件を起こしています。これはシリア国民どうしの「シリア内戦」とは言い切れません。ある意味で、これはシリアが「世界大戦」の肩代わりをさせられていると私は考えざるを得ません。
将来どうなるのかという問いに立ち返ると、少なくともアサド政権がかつて全土を支配していた当時の状況になることはないでしょうが、内戦が終結してシリア社会が再建されるのはずっと先になるのは間違いありません。医療も、仕事も、学校も、すべての機能が停止していますし、いつ正常に戻るのか、誰にも分りません。今後、さらに状況が悪くなる可能性だってある。
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