◆公職選挙法、2013年の改正で代筆投票は「投票所の事務に従事する者」のみに
衆議院選の投票を4日後に控えた10月18日、障害があるため文字を書くのが難しい大阪府豊中市の中田泰博さん(45)が期日前投票にのぞんだが、ヘルパー代筆を断られ投票できなかった。(矢野 宏/新聞うずみ火)
公職選挙法では、候補者名や政党名を投票用紙に自分で記入するのが難しい有権者は代理(代筆)投票を申請できると規定されている。
だが、2013年の改正で代筆は「投票所の事務に従事する者」に限定され、家族や付添人は代筆できなくなった。「代筆投票については投票の公平さを確保する」というのがその理由だ。
中田さんは先天性の脳性まひにより自筆を理解してもらうのが難しく、投票用紙の枠を超えて無効票と判断される恐れがあったため、これまでの選挙では気心の知れたヘルパーに代筆投票してもらってきた。だが、昨年7月の参議院選では認められず、投票を断念した。
このため今年3月、「投票内容は高度なプライバシーのはず。見ず知らずの選挙管理委員会の職員に投票先を伝えて書いてもらうことは、その職員に明かすこと。投票の秘密を定めた憲法15条に違反している」として、国を相手に自分が希望する補助者の代筆を認めることを求める訴訟を大阪地裁に起こした。
今回、衆議院選の期日前投票で、中田さんは自治体の裁量で代筆投票を認めてもらおうと、ヘルパーと一緒に車いすで投票所がある豊中市役所を訪れた。
「代筆はヘルパーにお願いしたいんです」という中田さんに、選管職員は「今の公職選挙法ではそのようになっているのでご承知下さい」と認めず、「投票の秘密は侵してはならないと定められた憲法をないがしろにするのですか」と問いかけに対しても「公職選挙法に基づいてやっているだけです」と繰り返す。
中田さんは「公選法の規定は憲法に違反しているのではないですか。見ず知らずの人に投票先を明かしたことで不当な圧力を受けるかもしれないじゃないですか。憲法と公選法とどちらが大切なのですか」と訴えたが、明確な答えは返ってこない。選挙管理委員会の事務局長が代わって応対したが、ヘルパーによる代筆は認められなかった。
中田さんは「納得できない」と悔しさをにじませた。
【矢野宏/新聞うずみ火】