鴨緑江沿いに中国公安当局が立てた看板。密輸、麻薬売買禁止とある。2017年7月撮影石丸次郎

◆貿易会社幹部は悲嘆 密輸も模索

11月から12月にかけて、中国に駐在する複数の北朝鮮貿易関係者と電話で話した。そのうちの一人は、

「上部から容赦なく収益のノルマを達成するよう求められて辛い。『手段と方法を選ばず金を作れ』と言われる」
と述べた。

別の貿易関係者も
「中国に出せる物が少なくなって非常にしんどい。何とか日本で買ってくれる品物はないか?」
と、言葉少なに苦境を嘆いた。

一方で、国家機関が密輸を模索する動きが始まっているようだ。北部両江道の取材協力者は11月、国境の川・鴨緑江上流域での密輸について調べ、「(制裁対象の)亜鉛を鉱業省が、密かにトラック二台使ってどんどん中国に出している」と伝えてきた。

量がかさばる鉱物を密輸するのは目立つし、効率が悪くないか? と質問すると、この協力者は「国家機関が直接乗り出しているので、保安署(警察)も一切取り締まらない」と説明した。

さらに、「スルメの密輸が計画されている。軽くて保存もきくし、値段も高く旧正月の需要で中国側からも引きが多い」と述べた。

とはいえ、国境地域での中国の密輸取締りは厳しくなっており、亜鉛やスルメが密輸できたとしても量はきわめて限定的なはずだ。制裁回避には焼け石に水だろう。なお、12月21日時点で、北朝鮮国内の市場の物価と外貨交換レートは安定している。(カン・ジウォン/ 石丸次郎)

鴨緑江で漁をする北朝鮮の住民。国境警備隊から許可を得ていると思われる2017年9月撮影パク・ヨンミン(アジアプレス)

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