開城工団製品が大量に売られていた両江道の恵山市場の女性商人。2013年8月に撮影アジアプレス

◆勝手に生産して国内販売

金正恩政権が核実験を強行したため、韓国企業が2016年2月に撤収した開城(ケソン)工業団地で、北朝鮮当局が工場を無断稼働させて衣料品を大量生産し、国内で販売していることが分かった。生産された製品は、個人商人たちによって全国の市場で流通しており、主に富裕層から人気を博しているという。北朝鮮内部の取材協力者が調査した。(カン・ジウォン/石丸次郎)

アジアプレスの複数の北朝鮮内部の取材協力者は、昨年11月以降、衣料品の流通業者などに会って、開城工団で生産された衣料品の国内流通の状況について調べた。

北部地域に住む取材協力者A氏は
「開城工団で生産された製品が全国の市場で販売されている。韓国人が撤収した後、中国向けに注文を受け生産していたが、(経済制裁で)、中国に輸出できなくなり、国内向けに販売されるようになった。昨年秋までは、手袋と帽子以外、靴下から下着まで多様な衣料品を生産していたが、市場では中国製品よりも高値で販売されている」と述べた。
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北朝鮮当局は、昨年10月6日に、祖国平和統一委員会の対南宣伝メディア「わが民族同士」の論評を通じて、「工業地区で我われが何をしようと、どこの誰も口出しできない。(中略)工業地区の工場はさらに力強く動くだろう」と、開城工業団地を一方的に稼働させていることを事実上認めていた。

取材協力者A氏によれば、生産された製品には一切商標やロゴがないものの、「工団製品」と銘打って販売されているという。またこれら「工団製品」は、機関や企業を通じて市場に流通しているのではなく、「トンチュ」と呼ばれる新興成金などが買い入れて地方に流通させているとのことだ。まず黄海北道の沙里院(サリウォン)に出荷された後、コンテナ車で恵山、清津、金策、咸興などの大都市に運ばれているという。
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