◆アスベスト取り残しの事実すら共有されず

2017年3月19日に見つかったアモサイト(茶石綿)の繊維束(事業者提供資料より)

その後、アスベストを除去できる真空掃除機による清掃は実施したと釈明した。

だが、清掃の実施は4月になってからである。

古川さんは「1か月も後になって(清掃に)行ったって意味がない」と批判した。

この問題については公表もされていない。こうした対応ぶりにも堺市のアスベスト問題に対する危機感のなさがうかがえる。

さて現状を整理すると、まず(1)と(2)で示したように、現状は煙突にアスベストの取り残しが存在し、市建築課はそれを認識しているにもかかわらず工事を終了させた。

2017年3月25日の懇談会翌日、現場には煙突内などのアスベスト除去工事についての掲示がされていた(井部正之撮影)

一方、建築監理課をはじめ、ほかの課はその事実を知らなかった。しかも分析機関の報告書に存在したその取り残しの指摘は、市の公式文書としては保管されていない。

環境対策課は市で独自に実施している施策として、アスベスト除去工事が終わった場合、完了報告を出させていると交渉時に説明していた。交渉議題は事前に通告してあったにもかかわらず、同課はこの取り残しを把握していなかったどころか、完了報告の有無さえ答えられなかった。

完了報告の内容がどうなっているかは現段階ではわからないが、アスベストの取り残しについて記載がなければ、工事が適正に完了したと虚偽報告されたことになる。

いずれにせよ、建築監理課が知らなかったことは重大だ。なぜなら市のホームページによれば、同課は市建築都市局建築部で「市有建築物の保全業務(施設点検及び施設台帳管理を含む。)の総括、指導及び調整」や「部内の連絡調整」を担っているからだ。当然、市の施設台帳などにアスベストの残存が記載されなかったと考えるしかない。

2月15日の中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会堺対策チームと堺市の交渉のようす(井部正之撮影)

さらに堺市は2016年6月のアスベスト違法工事の反省から、2017年5月アスベスト対策推進本部を設置。危機管理室に専任のアスベスト担当を配置した。

堺市におけるアスベスト問題の原点である現場を片付ける工事で、問題の煙突にアスベストを残したままとするのなら、当然「アスベストに関する施策の総合調整」を担う同推進本部や危機管理室が把握していなければならないはずだ。

ところが、そうした情報共有すらできていない。それどころか、(3)に示したように煙突にアスベストの取り残しがあるとの情報を報告書から削除させた。

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