◆15日の指摘は確認せず放置
また交渉当日に何度も取り残しが結局あったのかどうかを市に聞いているのだが、市は明確に回答しなかった。こうしたあたり、市は誠実に答えていないといわざるを得ない。
さて問題は取り残しの有無だ。
市建築課は5月中旬に取り残しがいまだあるとの指摘を確認したにもかかわらず、現場確認はおろか、その指摘をした分析機関に事実確認すらしていないのだ。それでいて、その記載のあるページは報告書から削除させた。これは隠ぺいとしか考えようがない。
しかも取り残しの存在を4月15日以降、1週間以上も現場で顔を合わせながら、分析業者から報告されなかったと市は主張した件だが、これも市の説明通りではなさそうなのだ。交渉後、分析業者に確認したところ、「4月15日に現場で市職員に取り残しがあると伝えています」と証言した。
窪園伸一建築局長は「市としては(取り残しは)ないんです。安全なんです」と強調した。
だが、改めて現場をきちんと第三者の専門家に確認させるよう求められると拒否した。
窪園局長は「周辺の保育園のかたとか、住民の安全が第一」と口にしながら、「(煙突を)開けてしまうということは周辺のかたに心理的にあると認めて開けたのかと(なりかねない)」などと拒否した。
しかし、取り残しもなく安全なら、煙突内を確認させても問題はないはずだ。むしろ疑惑が出ているからこそ、きちんと事実確認させて、疑惑を払拭することこそ市には求められている。市側の主張は矛盾だらけで、不都合な真実を隠そうとしているようにしか見えない。
交渉に同席した長谷川俊英市議はこう追及した。
「この資料の(4月15日の取り残しの)指摘は少なくとも5月の段階でわかったわけでしょ。だけどこの事実について確認しようとしなかった。現場はいま見たくても封をしているから開けないとおっしゃってるし。この指摘がどういう指摘なのかということを分析機関に問い合わせもしなかった。なにもしないまま、肝心かなめの証拠の文書は表に出ないようにしていた。そもそも煙突問題はみなさんがあり得ないような見逃しをした結果出てきた。それで大変だったわけでしょ。その当初と同じミスをしているんじゃないかと指摘せざるを得ない。もう一度事態を検証することが必要ではないか」
窪園局長は「当初のこういう(取り残しを指摘する)写真が出てきたことに対して、業務の範囲外であると外したと。このとき本当に大丈夫かと気持ちがいかなかったことについて、市として対応が十分でなかったと思っております。ただ検証につきましては少し検討する時間をいただきたい」と回答した。
長谷川市議はこう市に釘を刺した。
「あってはならないミスが2度続いたと考えざるを得ない。3度続いたらとんでもないですよ。それほどの事態だと考えてほしい」
きちんとした検証が今後されるのかどうか。古川さんはこう訴えた。
「局長は安全、安全といいますけど、その言葉が一番不安なんです。(2016年の事故と今回の隠ぺい疑惑で)2度こうなったら信用できなくなった。煙突1本の問題じゃないんです」(続きを読む>>>)
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