◆市は「工事は適切」と主張

3月5日の堺市議会で窪園伸一建築都市局長は、報告書の改ざんは「私ども担当職員が軽々に判断して報告書から外すように元請け業者に指示した」と認めた。

だが、「工事は適切」と主張した。

その根拠を窪園局長は、市職員だけでなく、「元請け、施工業者も目視で確認したうえで再度除却作業し、封印するための薬品を塗布。分析機関が同席して確認したわけではないが安全」と答弁した。

市建築課に2月27日に確認したところ、2017年3月19日の除去工事後、同22日と同23日に複数の異なる建築課職員が取り残しがないことを目視検査した。その際、元請け業者も立ち会い同様に確認した。ただし、市建築課の永野達彦課長は3月9日、完了検査は2017年3月24日および同28日と説明しており検査日が異なる。

さらに同4月11日に分析機関から取り残しの指摘を受けて、同12日に建築課職員と元請け業者、アスベスト除去業者が現場を見たが「正直(アスベストが)残っている確認ができなかった」という。

この間に実際に現場確認をした市職員のうち1人はそもそも煙突の完了検査をしたことが一度もなかった。別の1人は一度だけ経験していた。

だが、2人ともアスベストの取り残しを指摘したことはない。だとすると、市職員に十分な経験や知識がなかった可能性がある。

元請け業者や施工した除去業者はアスベストの取り残しがあったとなれば、施工や管理がずさんだったとそしりを受ける。再除去となれば、費用もかさむ。

逆に確認できないとして、清掃程度でごまかせれば、業者としての信頼性が揺らぐことも、費用負担が生じることもない。元請け業者らにはアスベストが確認できないほうが都合がよい事情がある。

一方、市建築課によれば、分析機関が元請け業者から請け負っているのは大気中のアスベストの測定と分析だけだ。

この分析機関はアスベストが建物周辺に散乱していることや取り残しについて報告する義務もなければ、そうした報告をしたところで利益になるわけでもない。むしろ面倒ごとを引き起こしたとして、事なかれ主義の行政や元請け業者から目を付けられかねない。

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