大阪市教育委員会が2018年度から「主務教諭」を新設する人事制度の導入を予定している。大阪維新の会による教育改革が強行されたら学校現場はどうなるのか。教職員組合の「教職員なかまユニオン」と「大阪教育合同労働組合」が3月9日、大阪市中央区のエルおおさかでシンポジウムを開いた。(新聞うずみ火 矢野宏)
◆上意下達の学校運営がますます強化
大阪市の教員は現在、教諭、首席・指導教諭、教頭、校長と段階的に上がっていく。主務教諭は教諭と首席・指導教諭との間に新設され、児童や生徒を教えながら若手教諭の指導なども行う。
「大卒で教員経験8年以上」などの条件を満たした希望者から選考されるが、懲戒処分を受けた場合は対象外となる。37歳までに主務教諭にならないと、給与は32万円程度で据え置かれ、本来なら60歳まで続く昇給は止まる。
「教職員なかまユニオン」大阪市支部長の笠松正俊さんは「同じ仕事をしているにもかかわらず、教員は主務教諭と一般教諭に分けられ、学校現場は二分されてしまう」と、その弊害を指摘する。
「新制度導入の狙いは『頑張る教員を評価するため』というが、選考基準があいまいなのです。頑張っているかどうかを評価するのは管理職です。管理職の受けがいい教員が評価され、今でさえ現場は意見が言いにくい雰囲気がありますが、上意下達の学校運営がますます強化されるでしょう。家庭に問題のある児童・生徒を抱えていて主務教諭にならない道を選べば、仕事や責任が増えるのに給与が上がらないことになる」
定年退職後に再び採用された「再任用教員」からも導入に反対する声が上がった。
◆「不利益を被るのは児童や生徒と保護者」
「学校現場で一番大事なのは教員同士のつながりであり、信頼関係。にもかかわらず、今の学校現場はそれどころではないほど忙しい。始業前の7時半前に来て、夜の9時が過ぎても残っている人がほとんど。主務教諭が導入されたら、現場はますます多忙に拍車がかかる。これ以上忙しくなると、子供たちに対する対応も乱暴になるのではないか不安です」
導入に関しても疑問だらけだという。大阪市教委は教職員組合との団交を打ち切り、2月6日から主務教諭の募集を強行したが、大阪市議会で各会派から「育児・介護休業で年45日以上休んだ場合を選考対象外」としたことに批判が集中。市教委は制度を再検討して市議会に再び提案している。
中学で産休講師をしている元高校教諭は「全国的に採用を絞っていたため、30、40歳代の教諭が不足しています。にもかかわらず、昇給を停止すると他市への人材流出を招くでしょう。その結果、20歳代の教員しかいなくなり、その若い教員を指導する先生がいなくなる」と指摘し、こう言い添えた。「不利益を被るのは児童や生徒であり、保護者なのです」