政権トップになって6年間、実質的に外交活動ゼロだった金正恩氏が、韓国政府の特使に会ったのを皮切りに、中国の習近平国家主席、IOC(国際オリンピック委員会)のバッハ会長に会うなど、外交の表舞台に姿を現した。国際社会には緊張緩和ムードが広がっているのたが、北朝鮮国内はまったく逆で、大々的な住民統制が始まっている。
去る3月18日、北部地域の取材協力者たちから、公共の場に「布告文」が張り出されたという報告があった。「非社会主義的行為をする者を厳罰に処す」というタイトルで、全国で掲示されているものと思われる。まだ現物の写真を入手できていないが、中国への越境、密輸や麻薬販売、中国の携帯電話の不法使用を厳罰に処すという内容の他、資本主義的な経済現象、資本主義的な服装や髪形などを厳重に取り締まることを、国民に通告したものだという。
街の辻々には「糾察隊」と呼ばれる取締り組織が立って道行く人々の身なりを検査している。これは昨年末に金正恩氏が演説で号令をかけて始まったものだ。「『糾察隊』はハサミを持って立っていてジーパンは切られてしまう」と北部地域に住む女性が怯えて伝えてきた。
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金正恩政権は、2017年中は核・ミサイル開発にまっしぐらだった。国際社会から厳しい非難と制裁を受けた。年明け、平昌五輪参加を機に対話ムードに局面を転換させるのに成功した。それを見越して、あらかじめ国内引き締めを準備していたものと思われる。
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