北朝鮮では、国民に対し特別に厳しい統制措置を講じる際、「布告」が出され公共の場に張り出される。アジアプレスでは、少なくともこの10年間で4回の「布告」が出されたことを確認している。
例えば2009年12月に出された「布告」は、「外貨を流通させた者は死刑も含め厳罰に処す」という内容だった。他に「交通秩序を乱す行為」「危険薬物使用」を厳罰に処すというものがあった。
3月19日に新たな「布告」が出されたことを、多数の取材協力者が伝えて来ている。人民保安省(警察)名の「反社会主義、非社会主義の行為をする者を厳罰に処すことについて」という題目で、尊厳ある我われ式社会主義に反する行為を強力に取り締まるという内容。住民に対しては所属する機関、組織の会議で、別途口頭で、中国への越境、密輸や麻薬販売、中国の携帯電話の不法使用、資本主義的な経済現象、資本主義的な服装や髪形などを厳重に取り締まると、説明があり住民の間で緊張が高まっているという。
ところが、3月31日に北部の恵山市で、張り出された「布告」が剥がされる事件が発生した。「恵山駅前に張られた『布告』が夜間に剥がされた。糊付けした四隅だけが残っていた。保安(警察)、保衛部(秘密警察)が動員されて大捜査が始まった」
複数の取材協力者が、このように伝えてきている。統制強化を図る当局に対する不満からか、外国に「布告」の内容を伝えようとしたのか、実行者の動機は不明だ。
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