(参考写真)路上に机を出して中国製の靴下を売る女性。2013年10月両江道にて撮影「ミンドゥルレ」(アジアプレス)

 

北朝鮮北部地域に住む40代のシングルマザー・金ミオクさん(仮名)に、3月後半ロングインタビューした。夫と離婚後、市場で商売をして娘を育を育てている金さんの夢は何だろうか?(石丸次郎/カン・ジウォン)

◆もし戦争が起こったら

――北朝鮮の外で起きていることを聞くことはありますか?

 市場ではいろんな話が飛び交います。どうやってそんな情報が漏れてくるのか分からないけど、外の噂がいろいろ話されています。

――最近はどんな噂がありましたか?

 公海上で朝鮮の船を取り締まって貿易船が出港できなくなったそうです。 貿易船に乗って数か月ごとに(海外に)出ている人たちはお金持ちなんです。(市場で)工業品を売っている誰それの親戚が、(制裁で)貿易船に乗れなくなったというような話がありました。

――戦争が起こりそうな雰囲気を感じることはありますか?

 いつもそんな中で暮らしてきたので慣れました。もう特別な感じもありません。

――常に脅威を受けているけれど、怖いと思わなくなったという意味ですか?

 そうです。我われはずっと制裁を受けきたし、(当局が)「緊張を緩めるな」とか言ってきたから。

――もし米国と戦争が起こったら、どちらが勝つと思いますか?

 戦争なら核戦争ですよね。

――あなたはどう思いますか?

 戦争が起きれば、皆死ぬのではないですか。我われは失うものがないから反撃するでしょう。でも米国がじっとしているはずはないから、核戦争になって、皆死ぬことになるでしょう。

――最近も「早く戦争が起きればいいのに」と言う人はいますか?

 庶民はそう思っていますよ。しかし、金持ちや幹部たちは、今のままで暮らしたいと思っているはずです。

注 北朝鮮当局は国民に対し、長年にわたって「戦争の危機」を訴えてきた。国内の結束と韓米への敵対意識を醸成するのが目的だ。だが、いつまでたっても戦争が起こらないため、当局の宣伝を「言葉だけだ」と捉える人が増え、むしろ「やるなら早くやればいいのに、そうすれば決着がつく」と語る人が珍しくなくなった。それは、戦争を望んでいるというわけではなく、ずっと苦しく抑圧された暮らしが早く終わってほしいという庶民の表現である。

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