外交の表舞台に一切顔を出さなかった金正恩氏が、韓国の特使に対面したのを皮切りに、中国訪問、南北首脳会談に臨み、5月には米国のトランプ米大統領と非核化を交渉に出てくる。国営メディアでは常に「偉大な領導者」と称えるが、北朝鮮庶民はどう考えているのか? 北部地域に住む女性へのインタビューの四回目は、金正恩時代6年の評価についてまとめた。
◆金正恩時代6年の評価は?
――金正恩将時代がもう6年になりました。どう評価しますか?
金 良くなったものは何も無いです。
――無いですか?
金 はい。庶民たちに何をしてくれましたか?いつも言葉ばかり。何か変わったことがありますか?幹部を粛清したり、「方針」出したり…同じことの繰り返しです。経済強国にするなんて言いますが、誰が、どうやってするというのでしょう。毎日人民班で世帯の負担が大きくなります。配給があるわけではないし、何かを(人民のために)すべきなのに、何もありません。
注 人民班は末端の行政組織で戦前の日本の「隣組」に類似。人民班を通じ住民に物資やコメや現金の供出が度々命じられるため不満が強い。
――商売がうまく行って、収入が多くなったのは金正恩氏のおかげだとは思いませんか?
金 それがなぜあの人のおかげですか?私たちに何もしてくれないから、自力で生きているのです。金正恩とはまったく関係ないです。
――教育部門はどうでしょうか?最近は孤児のために「中等学院」などを作って入れて、以前よりコチェビ(ホームレス)が減ったと聞きましたが?
金 コチェビたちは、入れてもすぐ飛び出して行きます。たくさん食べてすくすく育つべき年頃の子どもたちなのに、一日にトウモロコシご飯を少し与えるだけだから、お腹が空いて逃げ出して、市場で物乞いしていますよ。
――そんな子供たちが多いですか?
金 多いですよ。
――完全に閉じ込めて逃げないようにすると聞きましたが。
金 それでも逃げます。子どもたちは、皆逃げようとします。
――以前のように放置するよりも、孤児施設を作って管理する方が良くないですか?
金 どうでしょう。コチェビたちを軍隊にでも送って、ちゃんと面倒を見たらいいけど。
――そこで成長すると、軍隊に送るのでしょうか?
金 はい。軍隊に行く子もいるし、「突撃隊」に行く子供もいます。
注 「突撃隊」は青年団体などに組織する建設作業専任の部隊。3年程度の奉仕労働で労働党入党のチャンスが与えられる。
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