◆自爆突撃や敵陣攻略戦で「活躍」
過激派組織「イスラム国」(IS)の名を知らしめたのが、自爆車両攻撃。爆弾を満載した装甲車で次々と突撃し、自爆攻撃をかける。イラク軍やクルド部隊もこの自爆車突撃に苦戦してきた。あの独特の車両はどのようになっているのか。(アジアプレス・玉本英子)
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◆防弾窓にはいくつもの弾痕
「やつら、これで突っ込んできたんだぜ。みんな必死で撃ちまくったよ」。
イラク北部シンジャルの前線基地でクルド・ペシュメルガ兵が見せてくれたのは、ISの突撃車両の数々。装甲ワゴンやブルドーザー(ホイールローダー)が並ぶ。いずれも実際に基地に突入戦を仕掛けてきてきて、阻止されたのち捕獲されたものだ。
ブルドーザーの車体は鉄板で装甲が施され、鉄柵で取り囲まれている。鉄柵はスラットアーマーと呼ばれ、敵から対戦車ロケット砲を撃ち込まれたとき、砲弾の威力を弱めたりする効果があるという。
米軍の装甲車にも同じような装備があるが、ISは鉄材など加工し、溶接で取り付けていた。車輪部分は鉄板ですべて覆い、下は鎖かたびら状だ。狙われやすい車輪を守る工夫がなされていて、その「執念」に圧倒される。
車体には「アブ・オマル・バグダディ爆破大隊34号」の文字。ISの公式動画にも、これとほぼ同じ車体が映っているので、量産化されていたようだ。
運転座席に座ってみた。ひときわ装甲が厚く、内部にも鉄板が取り付けられている。窓は防弾ガラスだ。別の軍用車から取り外した防弾ガラスを流用して加工されたものと思われる。ガラスに残るいくつもの銃弾の痕が、戦闘の激しさを物語っていた。
この装甲ブルドーザーは、クルド側の基地の遮蔽壁や盛り土を排除し、後続部隊の突入路を開く目的だったという。起伏のある地形でもブルドーザーは接近してくる。銃撃程度ではびくともしない。
このとき基地に突入してきたIS部隊は30名。戦闘は数時間にわたって続いた。装甲車や重機で進撃してくるISに、クルド側は銃弾やロケット砲弾を浴びせ、阻止した。IS戦闘員は死亡。うち一人はまだ息があったようだが、自爆ベルトを爆発させる危険性があったため、現場で射殺したという。
これを運転していた戦闘員は、突撃のとき何を思っていたのだろう。残された家族はどうしているのか。装甲ブルドーザーのハンドルを握り、様々な思いが頭をよぎった。
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