2014 年8月、過激派組織イスラム国(IS)によるシンジャル制圧。数万人が、かろうじて町から脱出し、クルド自治区に逃れることができた。一方、幹線道を閉ざされ、逃げ場をなくした約1万の人びとは、シンジャル山で包囲され、飢えと渇きに苦しんでいた。
それまで、国際社会だけでなく、イラク国民ですらヤズディについてはほとんど知られていなかった。IS殺戮に晒された住民の悲痛な訴えを受け、イラク軍や米軍主導の有志連合軍が、孤立したヤズディ住民のために輸送機で上空から食糧投下の作戦を展開。この時期、ようやく「ヤズディ教」とは何かがクローズアップして報じられるようになる。
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ただ、忘れてはならないのは「大量破壊兵器がある」などの理由で、イラクの宗派・民族バランスを無視して戦争を開始したのはアメリカである。IS台頭の一因を作り出し、イラク国民が今日のような状況に直面することになった責任の一端を担っているといえる。そしてこの戦争を日本が支持したことも忘れてはならない。
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