ところが、その現場を片付けるため2017年3~4月に実施した同事務所の煙突内などのアスベスト除去工事が不適正だったとの疑惑が生じていた。これまで分析機関による取り残しの指摘について、報告書から無断で削除させるなどの改ざんを認めている。市は否定するが、その目的は煙突内のアスベストの取り残しを隠ぺいするためとみられている。
この問題を追及してきた長谷川俊英市議は「分析機関が指摘した煙道部分だけでなく、横引きダクトの接続部分でもアスベストの残存が見逃されていたことが判明した事実は非常に重い」と指摘する。
2017年3~4月の煙突内除去工事をめぐっては、同5月中旬に市は報告書で一度取り残しの指摘を受けたうえで実施させた「清掃」作業後となる同4月15日段階の取り残しの指摘に気づいていた。にもかかわらず、市は分析機関に事実確認すらせず放置した。長谷川市議はこの点についても「市議会で改めて質さざるを得ない」という。
◆行政対応の「検証が必要」
また、分析機関の指摘を無視し「工事完了」と判断し工事代金を支払ったことや、取り残しを指摘した分析機関の報告書を改ざんして、その指摘のあるページなどを削除させた“隠ぺい”が意図的だったとの疑惑といった行政対応について、長谷川市議は「検証が必要」と述べた。
さらに同市議は「今回の検証結果によりアスベスト除去工事の『完了(を確認する)検査』の必要性が確定した。市が発注する公共工事はもとより、市内の民間工事における完了検査の仕組みづくりに取り組むことが堺市の責務となる」と改めて強調した。
報告書の情報公開をして、改ざんを見つけた被害者団体、中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会前会長で堺市在住の古川和子さんはこう感想を述べる。
「堺市は煙突内にアスベストがあることをいままで認めてこなかった。それがようやく、実際に残っているとはっきりした。最初に専門業者である分析機関の指摘に向き合わず、無視したからこれだけの騒動になった。指摘されたときにきちんと対応していれば、隠ぺいの必要もなかったはず」
古川さんは第三者による行政対応の検証が必要と提言する。
「今回の問題は堺市のアスベストに対する認識の甘さ、危機管理のなさが原因です。同時に、同じようなことがほかの工事でも起きているのではないかとの疑惑が出てくる。今回の問題についての第三者による行政対応の検証はもちろんですが、過去の工事についても検証が必要ではないでしょうか。また、再び同様のことが起こらないように独自のアスベスト対策条例をつくって市の責務や現在の規制のすき間を埋める必要があります」
堺市が存在しないと言い続けてきた煙突内のアスベストが実際に確認され、市は面目丸つぶれである。今後の対応についてもまともに回答できないすがたは情けないというしかない。
市はなぜこのような問題が起きたのかを徹底的に検証し、そのうえで同じことを繰り返さないための対策に取り組む必要があるのではないか。