◆大手商社員が物販で村回る
輸出不振は貿易会社の経営と社員の暮らしを直撃している。主要輸出品だった石炭、賃加工の繊維製品、金属、水産物の取引が禁じられたため、制裁に抵触しない品目の開拓を懸命にやっているが成果は薄いようだ。各地の取材協力者に調査してもらった。
「中国に輸出しているのは、賃加工品はカツラ、つけまつげ、帽子などの草製品くらい。あとは住民から買い取った漢方薬材料程度だ」(両江道の取材協力者、4月中旬)
「清津(チョンジン)市では強盛(カンソン)貿易会社、モラン会社などの権力機関傘下の大手商社の支社ですら、ほぼ営業が止まっている。給料も食糧も支給されず、従業員は中国製の家電製品や雑貨、布団などを市郊外で売り歩いて歩合をもらって食べている。一か月に1500中国元ほどを会社に納めるノルマがあって、未達成が続くと解雇されると言っていた」(咸鏡北道の取材協力者、4月中旬)
また、輸出の激減によって必要物資の輸入に大きな支障が出ている模様だ。一例を挙げると、4-6月の種まき、田植えの時期に必要な化学肥料が不足しているという。
「両江道では天池会社が鉱物と交換する方式で独占的に中国から肥料を輸入しきたが、輸出が止まって現金で購入しなくてはならなくなった。天池会社だけではとても現金を準備できず、多くの貿易会社が肥料輸入を命じられている」(両江道の取材協力者、4月中旬)
金正恩氏が3月に急遽中国を訪問したのは、習近平主席に制裁の緩和を頼むのが目的で、その成果が間もなく現れるのではないかという噂が住民の間で語られている。(石丸次郎)
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