「ナクバの日」を忘れぬよう、テントの中で、伝統的なパン作りをする女性たち。(ガザ地区東部イスラエル境界付近 2018年4月・撮影・古居みずえ)

「ナクバ(大災厄)」むけて抗議に立つ女性たち

5月14日はイスラエル建国の日(※ユダヤ暦では4月18~19日)。ユダヤ人にとっては、ナチス・ドイツの虐殺と迫害の過酷な経験を経て手にした「独立国家イスラエル」。一方、パレスチナ人の多くにとっては、この日は別の意味を持つ。1948年のイスラエル建国は、故郷パレスチナ占領の日であり、土地を追われた70万人以上の住民が各地に離散難民となった。こうした背景から、パレスチナ人は「イスラエル建国の日」の翌日の5月15日を、「ナクバ(大災厄)の日」と呼んできた。

4月13日、ガザ地区で呼びかけられた、「帰還の行進」デモには、多くの女性たちが参加した。故郷への帰還を訴える人びと約1万人が集まり、パレスチナ伝統衣装に身を包む女性たちの姿も多数見られた。

ガザ地区ビーチ難民キャンプからやってきた主婦ナビーンさん(45)は、5月15日のナクバの日を前に、故郷に帰る思いを込めて1948年以前の生活を再現した。「パレスチナのアイデンティティーと文化を忘れないために、伝統的なパンを焼き、パレスチナの民族衣装を着ます。これが私たちの抗議の仕方です」。

米国のトランプ大統領は5月14日にアメリカ大使館をエルサレムに移すと発表した。 「ナクバ(大災厄)」としてパレスチナ人に記憶される日に、米国大使館がエルサレムに移転してくることに対して、パレスチナの人びとに強い反発が広まっている。怒りと抗議の声が渦巻くなか、ガザの街頭やモスクから、14日の「帰還の行進」の呼びかけが始まっている。たくさんの人たちがイスラエルの境界沿いに集まって混乱や衝突が予想される。
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