◆工事直後に「取り残し」指摘
2017年3~4月に大阪府堺市で実施された煙突内のアスベスト除去工事が不適正だったとの疑惑をめぐり様々な問題が生じている。今度は市が工事直後からその疑惑を知っていた事実が明らかになった。(井部正之・アジアプレス)
堺市では2016年6月、市発注の北部地域整備事務所の改修工事で、アスベストを約70~80%と高濃度に含む断熱材が使用された煙突を適正な対策なしに解体。その結果、周辺にアスベストを撒き散らし、市と職員4人が大阪府警に書類送検された(2017年3月不起訴処分)。
2017年3~4月のアスベスト除去工事は、違法工事により煙突内に残されたアスベストを除去するもの。前年の汚名を返上するための試金石といってよい、絶対に失敗してはならない工事だった。
ところが、除去工事後に煙突内にアスベストが残存していると現場を確認した分析機関により指摘されたのである。
堺市はこれまで2017年4月11日の分析機関による指摘により初めて煙突内のアスベストの取り残し疑惑を知ったと説明してきた。しかし、実際にはもっと以前から認識していた。
「一番最初に指摘したのは3月22日です」
そう明かすのは現場で空気中のアスベスト濃度測定などを元請け業者から請け負った分析機関の社長だ。被害者団体、中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会堺対策チームが堺市と実施している意見交換で4月9日と同27日、元請け業者や下請けのアスベスト除去業者、分析機関から聞き取りをしたところ、明らかになった。その社長はこう続ける。
「(2017年3月22日に)煙突の除去工事後の測定に入った。そのときに煙突上部からみて、アスベストが残っていた。(アスベストの)繊維(束)も見えている。そういうのが残っているんで、上にふたをするというので確認したほうがよいと(伝えた)」
元請け業者は「清掃した覚えがあります」と認め、作業をしたアスベスト除去業者も同意した。市の担当係長は同3月22日に分析機関から指摘があったことを明かし、同30日に「清掃」したと証言した。
市幹部が驚きの声を上げ、その場で確認を求めたことから、除去工事直後においても煙突内にアスベストとみられる取り残しがあったという重要情報が担当部局で共有すらされていない実態がうかがえた。