◆独自の対策確立せよ
市は翌2017年3~4月、同事務所内や煙突に残されたアスベストを除去する工事を実施した。つまり前年の違法工事現場の後片付けである。ところが、その除去工事でさえ煙突内にアスベストが取り残され、不適正だったとの疑惑が今年2月に明らかになった。
市が議会などで否定し続けた煙突内のアスベスト残存については、5月27日の専門家調査により、実際に煙突内にアスベストを含有した「断熱材の小片や小塊が残存」していた。また煙突内側には「筋状(縞状)」に取り残しが確認され、そこでは「アスベスト繊維(アモサイト)が目視でも確認された」と報告した。6月6日付けの中間報告はそうした状況から2017年の除去工事が「粗い仕事」と結論づけた。
こうした状況のため、堺市に対する市民の信頼は地に落ちた。違法工事からわずか1年でアスベストを取り残したとの記録をこっそり破棄されるのだから、いまのうちにきちんと施設を解体してほしいとの市民の声も当然ではある。
だが、問題は市にきちんとしたアスベスト除去工事を発注し、管理する能力がないことが今回の中間報告ではっきりしたことだ。解体するにしても、これでは“3度目の正直”ではなく、“2度あることは3度ある”事態が起きよう。
今回市の窪園建築都市局長は“反省”を何度も口にした。しかし、手元の書面を読み上げるだけで、そのために終始下を向いたままだった。専門家から「粗い仕事」と控えめな表現ながら、ずさんな工事だったことが指摘されたにもかかわらず、「残存は極小」「周辺に飛散はない」との言い訳ばかり強調しており、事態の重大さをどれほどきちんと受け止められているのか大いに疑問である。
長谷川市議も指摘していたことだが、アスベストの取り残しはあってはならないことだ。
たとえば、労働安全衛生法(安衛法)石綿障害予防規則(石綿則)に基づく「技術指針」や厚生労働省の「石綿飛散漏洩防止対策徹底マニュアル[2.20版]」では「石綿等の取り残しがないことを目視で確認する」よう求めている。環境省の「建築物の解体等に係る石綿飛散防止対策マニュアル2014.6」も「除去面に特定建築材料(アスベスト)が残っていないか目視確認を行い、残さずに除去を行う」と定める。
つまり、アスベストの取り残しがあること自体許されない。5月末の専門家調査で目視確認によりアスベストの残存が複数箇所から確認された以上、2017年の除去工事は不適正だったことは間違いない。
あるいは堺市は「残存は極小」だから工事は適正だと言い張り、将来的にアスベスト対策なしで解体するつもりだろうか。
市職員のスキルアップは当然だが、堺市は現在のところ、問題を小さく見せるべく努力しており、きちんと現状を受け止めているとも、十分反省しているとも思えない。そして、現状は市の建築部局の自浄能力がまったく機能しているとは言いがたい。
こうした状況である以上、今回の問題が発覚する端緒をつくった被害者団体、中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会前会長で堺市在住の古川和子さんが求めるとおり、市の責務を明確にさせ、きちんとした対策を実施させるためのアスベスト対策条例を制定するしかないのではないか。市議会における議論が待たれる。