大阪北部地震が発生した6月18日、法務省人権擁護局のアカウントが「災害発生時には…差別や偏見をあおる意図で虚偽の情報が投稿されている可能性」があるとして注意を呼びかけるツイートを行った。NHKテレビでも同日、「在日外国人などへの差別をあおるような投稿」「うそ」への注意をうながす報道を行った。朝日新聞は21日、「ヘイトデマ 許さないを着実に」と題した社説を掲載し、行政やSNSの運営会社に差別デマへの対応を求めた。さらに23日には産経も社説で「外国人に対する偏見、差別」を煽るデマを非難した。これまでなかったことである。(加藤直樹)
災害発生時には、外国人などのマイノリティーに対して犯罪者やテロリストのレッテルを貼る差別デマが必ず現れる。東日本大震災でのそうしたデマについては、荻上チキ氏の『東日本大震災の流言・デマ』(光文社新書)に詳しい。2014年の広島の土砂災害でも、15年の関東・東北豪雨でも、「外国人の空き巣」といったデマが流れた。16年の熊本地震のときも同様だ。古くは1995年の阪神淡路大震災のときも「外国人の放火」といったデマが流れた。
今後も災害のたびに、こうしたデマは現れるだろう。大事なのはそれを信じてデマを拡散するようなことのない社会をつくることであり、行政がそのために役割を果たすことだ。その意味で今回、法務省人権擁護局が素早く注意を呼びかけたことは、一歩前進だ。
なぜ災害時の差別デマをそれほどまでに警戒し、封じ込める必要があるのか。それは過去に、こうしたデマが実際の暴力につながったケースが少なくないからである。
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