◆取締りの強化
1998年以降は中国側の難民取り締まりも厳しくなった。辺防部隊(辺境防衛武装警察隊)と呼ばれる国境警備隊が内陸に向かう幹線道路で検問を行い、越境者を匿っていないか抜き打ちで民家を回る。越境者が内陸に拡散しないよう水際で阻止する作戦であろう。村々の辻には、
「不法越境者を助けるべからず、留め置くべからず」
という札が立てられていた。違反した場合は2000~5000元(1000元は当時約1万5000円)の罰金が科せられる。
取り締まりの強化と、数が多すぎて援助の限界を超えているため、国境沿いに住む朝鮮族たちも、食事を与えたあとは越境者たちを突き放さなければならない。前出の金さんは両江道恵山(ヘサン)市から越境してきた実兄を匿っていたが、辺防部隊に見つかり2000元の罰金を払う羽目になった。幸い、匿っていたのが肉親だったので逮捕は免れたが、北朝鮮にできるだけ早く送り帰すよう命じられた。
「兄さん、もう来ないでくれ」
そう言って、金さんは血の繋がった兄に小金を渡して北朝鮮に送り出した。
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