(4)「領導者」の偶像化
北朝鮮では、「領導者」に対する忠実性が最も高貴な道徳であることを強調している。首領がいるからこそ、今の幸福を享受することができ、これに対して無条件の忠誠で応えなければならないとしている。
高級中学校三年生の教科書では、人間は生まれてくる際に二つの生命を持つと強調している。肉体的生命と政治的生命がそれであるが、肉体的生命が朽ち果てようとも、党と首領のために捧げられた政治的な生命は永続するとし、首領のために自らを犠牲にする者を「高尚な精神の所有者」であると教えている。
例えば、金日成が抗日闘争をしていた一九三〇年代、根拠地があった白頭山麓の密林には、金日成を称えるスローガンが立ち木に刻まれたとされ、それが現在も厳重に保存されている。この「スローガンの木」を火災から守ろうとして命を落とした人々を英雄と描写し、彼らは死んだが政治的な生命は永遠であると記述している。
高級中学校三学年の教科書では、「首領に対する衷情は、われわれ学生青年たちが持つべき最も基本的な品性かつ、最高の道徳義理である。それは首領が革命の太陽であり、私たちの社会政治的生命の父母であるため」と記し、「首領が開拓した革命の偉業は、その後継者によって継承される」として、朝鮮革命は代を継いで完遂される事業であるため、首領の後継者がそのまま革命事業を継承するとして、金正恩世襲政権の正当性はいかなる者も否定できないと強調している。
さらに、学生・生徒が身につけるべき最高の道徳観と指導者の世襲の当為性について、次のように説明している。 「首領に対する忠誠は、私たち学生青年たちが身につけるべき最も基本的な品性であり最高の道徳義理だ。首領が開拓した革命偉業は、その後継者によって継承されるのであって、首領が持つあらゆる品格と資質を、最も崇高な高みで体現されている偉人の中の偉人は、(中略)金正恩元帥様である」(敬称略)(ペク・チャンリョン) 了