◆ラッカ活動メンバーの声

ラッカで何が起きているのか。何人かのシリア人に接触した。ある記者に紹介されたのが、地元の若者たち十数人で活動する市民地下組織「ラッカは静かに虐殺されている」だった。

「ラッカは静かに虐殺されている」主要メンバーでシリア・ラッカ市内で地下活動するイブラヒム・アル・ラカウィ氏に密かにネット回線を通してインタビューした筆者。(2015年2月・イラクで)

2015年2月、ネット電話で現地とつなぎ、メンバーの一人、20代のイブラヒム・アル・ラカウィ氏にインタビューすることができた。危険な中、なぜ活動するのか、と私は尋ねた。「誰かがここで起きている悲劇を伝えなければならないんだ」。そう彼は答えた。

ISのスパイ狩りは熾烈(しれつ)だった。映画に登場した「ラッカは静かに虐殺されている」メンバーの青年は身に危険が迫ったためドイツに逃れたが、父親は拘束され、銃殺される。

反IS活動団体「ラッカは静かに虐殺されている」メンバーの父親を処刑するIS。IS映像では、オレンジ色の「囚人服」を着せられ銃殺されるシーンが映る。(2015年・IS映像)

 

◆友人どうしが殺しあうシリア内戦の現実

ISは未曽有の残忍さで殺りくを繰り返し、世界各地で襲撃事件を引き起こした過激集団だ。だが組織が登場した背景をみるなら、イラク戦争後の混乱や、シーア派政権がスンニ派に対する圧迫を強めたこともIS台頭の理由の一つといえる。他方、シリアでは、月50ドルほどの給料がもらえるからとISに入った少年もいた。外国から流れ込んだ戦闘員らは組織をより過激化させた。ISという存在を一面的に見ていただけでは、なぜ、こんな集団が拡大したかは読み取れない。
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