ラッカからISは敗走し、クルド勢力主導の行政統治機構に移行した。かつてシリアを取材した際、私は自由シリア軍の19歳の青年に会った。ラッカ出身のアブゼルは出撃を前に顔をこわばらせて、こう言った。
「中学校の友だちが何人もISに入った。多くが戦乱で仕事を失った家族を支えるためだった。でも、僕は彼らに銃を向けなければならない。これは戦争だから」
いまシリアで起きている内戦。殺し合う相手は同級生であり、隣人でもあった。この悲しい現実にも私は目を向けたい。
(※本稿は毎日新聞大阪版の連載「漆黒を照らす」2018年5月29日付記事に加筆修正したものです)