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◆命がけの秘密撮影
内戦が続くシリアを題材にした、いくつかの映画が日本でも上映されている。その一つ、「ラッカは静かに虐殺されている」には考えさせられた。過激派組織「イスラム国」(IS)支配下のシリア・ラッカの状況を伝える市民記者グループを追ったドキュメンタリー映画だ。
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静まり返ったラッカの夜、警戒中の戦闘員の目を盗んで、街角にスプレーでIS批判の文字を書くメンバー。その様子を世界に向けてネットで発信する。どの地区で公開処刑があったのか、何人が殺されたのか、グループは隠しカメラで撮影し、記録した。
「背教徒」として殺害され、数日間放置される遺体。広場の鉄柵に並べられる生首。情報統制の中、ISの恐怖支配の実態と、そこに暮らす市民の姿が生々しく映し出される。撮影が見つかれば自身もスパイとして処刑は免れない。
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