学校法人「森友学園」への国有地売却をめぐる問題で、背任容疑で告発していた財務省職員らを大阪地検特捜部が不起訴としたのは不当として、森友問題を最初に取り上げた大阪府豊中市の木村真市議らが6月14日、検察審査会に審査を申し立てた。(矢野宏/新聞うずみ火)
◆「背任罪の根拠なし」
特捜部は、背任のほか、決裁文書を改ざんしたとする虚偽公文書作成など6容疑での告発を受理し、昨年春から捜査を進めてきた。
豊中市の国有地をめぐっては2016年6月に森友学園に売却された際、地中ごみの撤去費8億円あまりが値引きされ、価格が1億3400万円とされた。木村さんらが不当な値引きで国に損害を与えたとする背任容疑で、売却交渉時の財務省近畿財務局の担当者らを刑事告発したのは昨年3月のこと。11月には、会計検査院が「地中ごみの量は最大で7割減る」という試算を示し、「値引きの根拠は不十分」と指摘。さらには、近畿財務局職員が学園側と値引き交渉する際の音声テープが見つかった。
背任罪に問われるためには、国有地の値引き行為が、近畿財務局職員らが「森友学園の利益を図る」か「自己の保身」を目的に、故意に国に損害を与えたことを立証しなければならない。
特捜部は、値引きが過大だったとの証明にはごみの量を裏付ける客観的証拠が必要で、一定量のごみがあったと認識していた職員らによる撤去費の算定は「不適切とまでは言えない」と判断。また、ごみ撤去で開校が遅れれば学園側から損害賠償を求められる恐れがある中、売買契約に今後賠償請求をできなくする特約が盛り込まれた点に触れ、「故意に国に損害を与える目的があったとは認められない」と結論付けた。
◆記録改ざん隠滅も「罪には当たらず」
また、決裁文書から安倍首相や昭恵夫人らの名前が消されるなど、300カ所にわたって改ざんしたとする虚偽公文書作成罪などで告発された佐川宣寿前国税庁長官らについて、特捜部は「契約金額や日付など根幹部分は変わっていないので、嘘の文書を作ったとは認められない」として起訴を見送った。政治家の関与はあったのかについて、特捜部は会見の場で「捜査内容に関わるもので答えられない」と述べるなど、明らかにしていない。
このほか、学園との交渉記録を廃棄したとする問題については「これらの文書に保存義務はなかった」などとして、公用文書等毀棄や証拠隠滅の罪にはあたらないと説明するなど、告発された38人全員の6容疑について容疑不十分か容疑なしと結論付けた。
検察審査会に不服申し立てをした木村氏は「ごみがなかったことを知りながら、ごみを口実にタダ同然で国有地を売却したことが、なぜ背任罪にならないのか。国民の目の前で証拠隠滅されても罪にならない、この国の状況には頭がくらくらする思いだ。検察審査会の常識を信じて起訴されることを強く望む」と話した。
検察審査会では、有権者から選ばれた11人が審査し、8人以上が2回にわたって「起訴すべき」と判断すると、強制起訴されて裁判が行われる。(矢野宏/新聞うずみ火)