◆保存する新たな仕組み必要
2015年7月以降に発覚した大量誤廃棄問題を受けて、文書管理の方法を明確化し、その遵守を徹底したはずだったにもかかわらず、実際にはきちんと履行されていなかったわけだ。
誤廃棄された文書のうち、監督復命書と安全衛生指導復命書計123件については「労働基準行政情報システム」に一部が入力されてデータ化されているため「概要」は把握できるというが、それ以外は電子データも存在しない。つまり、資料が完全に失われたことになる。
厚労省や労働局は「業務に支障はない」と釈明するが、すでに労災関連の個人情報開示において、本来なら開示すべき情報が提供されない事態が起きている以上、明らかに支障が出ている。
各労働局の発表資料には「再発防止を徹底してまいります」とのむなしい文言が並ぶ。
だが、すでに対策を“徹底”したはずなのだ。
厚労省は2005年12月各労働局に対し、「アスベストに関連する文書については、現行の文書管理規程に定める文書の保存期間にかかわらず、当分の間、廃棄することなく保存すること」を指示。さらに2015年7月以降の大量誤廃棄問題を受け、同12月に「永年保存」とする範囲を明確化してその徹底を改めて指示している。
それでもわずか3年足らずで同様のミスが発覚した。もはや単なる現場の努力によって対応するのではなく、文書を電子データにするなどして保存しない限り廃棄を禁じる、といった現存する資料を「残す」ための対策が必要なのではないか。
同省総務課は「今の取り扱いは徹底的にやりつつ、おっしゃられたようにより確実に保存されるスキームがないか本省として考えないといけない」と同意する。しかし、予算の問題もあり簡単ではないとことばを濁した。
同省は「資料がないことで不利益が生じないよう通知している」というのだが、一定の条件を満たしたアスベスト工場の元労働者やその遺族に国が賠償金を支払う和解手続きなどに悪影響が出てもおかしくない。早急に対応すべきではないか。