懇話会の恒例行事となった市職員による謝罪のようす。市民のことばは市に届いているのだろうか(井部正之撮影)

 

◆問われた堺市の“姿勢”


最後にとくに強い意見を述べたのは耳原総合病院病院長の奥村伸二委員だ。

「この件については、報告書(からアスベストの取り残しを指摘した頁)を担当者が勝手に自分の判断で抜いたというところから、また次の問題に入った。(対応が)後手に回り続けているということをいい加減にわかっていただきたい」

奥村委員はこう前置きをしたうえで次のように強調した。

「(問題が)起こってしまった後にはリスク管理が重要。情報を正しく公開しないと。(市の)ホームページで継続的にすべての情報を公表すれば収束します。そうしないと健康被害よりもっと大きい問題が起こってく

る。(市は)なんか(リスク管理や情報公開を)甘く見ているなと」

ここで問われているのは堺市の“姿勢”である。

そもそもアスベスト除去作業で敷地境界よりも先で空気1リットルあたり3.1本ものアモサイトが検出されるというのは異常なことだ。環境省のアスベスト大気濃度調査検討会が201310月にまとめた報告書は、解体工事などで作業区画や敷地境界におけるアスベスト濃度の「管理基準」として、「空気1リットルあたり1本以下」と定めた。空気1リットルあたり1本を超える場合は「明らかに石綿の飛散が想定される」ため、対策を講じる

よう求めている。

そのため同省は2014年度以降、作業区画や敷地境界におけるアスベスト濃度で「空気1リットルあたり1本超」を異常値と判定するようになった。すでに自治体によってはこれを指導基準に定めている。

きちんと情報公開をする自治体であれば、今回のように空気1リットルあたり3.1本のアスベストが保育園の敷地内で検出されたとなれば記者発表したはずだ。とんでもない高濃度というわけではないが、すでに住宅地域では全国平均で同0.17本(2016年度)とほとんど空気中にアスベストは存在しないことからすれば異常値なのである。まして堺市では前年に違法工事でアスベストを大量飛散させ、そのリスク評価の懇話会をしている最中だった。そうした経緯を考慮すれば、絶対に記者発表しなくてはならなかったはずだ。

にもかかわらず、未公表だったことに対する謝罪も反省の弁もない。あげくに責任逃れとしか思えない「原因究明」の結果を繰り返す。懇話会の最後には担当部局の職員全員で頭を下げたが、すでに恒例行事でしかない。市民が求めているのは形だけの謝罪などではなく、市の姿勢が改まることのはずだ。

傍聴者からの意見を引き取るように情報公開とリスク管理の甘さを指摘した奥村委員は最後に「ぜひお願いします」と市に対応を改めるよう求めた。そのことばは市に届いたのだろうか。

★新着記事