大阪府堺市は北部地域整備事務所の煙突内にアスベストが除去工事後も残っているとの指摘について、専門家による調査後「残存部分は極小」と強調した。だが、実際には状況はかなり違っていた。(井部正之・アジアプレス)
【写真12枚】堺市アスベスト「取り残し」問題
◆煙突内に「ごっそり」残存
「えー、これ、全部アスベスト?」
被害者団体、中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会前会長で堺市民の古川和子さんが驚きの声を上げる。こんな声が上がったのは6月22日、古川さんら「家族の会」堺対策チームが大阪府堺市と意見交換をした際のことだ。
話し合いの席で堺市は5月27日の建築物石綿含有建材調査者協会による現地調査時に市が撮影させた煙突内部の高画質(4K=フルハイビジョンの4倍の解像度)映像を視聴させた。それをみると、同協会が6月6日付けで市に対して提出した中間報告では詳細には触れられていない現場の実態がうかがえた。古川さんは言う。
「(アスベストの残存は)極小じゃなくて、ごっそりじゃないの」
堺市では2017年3~4月に実施した除去工事後も北部地域整備事務所の煙突内にアスベストが残存していると指摘を受けていたが、市は「工事は適正」「取り残しはない」と主張。当初は拒否してきた専門家による現地調査が5月27日に実施され、ついに煙突内にアスベストの取り残しが存在することが確認された。
煙突内のアスベストが裏付けられたとたん、市は「残存部分は極小」と市議会などで強調するようになった。
だが、冒頭に示したように実態は堺市の説明と違っていた。
映像では、煙突内に緑色の養生テープを貼り付け、矢印を付けたアスベストの取り残し箇所がいくつも指摘されている。市建築監理課によれば、その数は「十数か所」に上る。
それだけではない。その映像には、中間報告で明記されていない、アスベストの除去をまったくしていない、未施工とみられる箇所も映っていた。
それは高さ3メートルの地点にある、煙突につながる「横引煙道」の周囲である。映像ではこの部分にも煙道内側に施工されたのと同じ「カポスタック」とみられるアスベスト含有の断熱材が施工されていたが、除去した形跡がなかった。この断熱材は発がん性の高いアモサイト(茶石綿)を80%という高濃度で含む。
中間報告では「横引煙道」の取り残しは「煙突用断熱材の小片や小塊が残存」とあり、分析により発がん性の高いアモサイト(茶石綿)を57.8%含有していることを確認したと示されている。