◆市は「想定外」と説明

映像をみると、実際に金属製の円筒管内に養生テープが貼り付けられ、矢印で示された場所やその周辺に断熱材の小片や小塊がへばりついている。

だが、円筒管周囲にはアスベスト含有の断熱材がごっそり除去されないまま残されているのが視認できる。毛羽だったアスベストの繊維束も場所によって確認できる。

市建築都市局建築部の澤中健部長も「ダクト(横引煙道)がついているのはわかっていたが、周囲に(アスベスト含有断熱材を)埋めているのはわかってなかった。想定外だった」と認めた。

澤中部長によれば、調査者協会から「横引煙道の周辺を重点的に調べたい」と事前に説明されたというから協会側で円筒管周辺の残存を認識していたのは間違いない。

だが、どういうわけか中間報告では明確に触れられていない。

中間報告の「煙突用断熱材の小片や小塊」の「小塊」が該当する可能性はゼロではない。

だが、まさか断熱材が施工された横引煙道周囲にほぼ未施工のままごっそりアスベスト含有断熱材が残されている状況を「小塊」とだけ報告したのだとすれば、同協会の見識を疑わざるを得ない。近く市に提出されるはずの最終報告でどのように説明されているのかに注目したい。

もともとこの横引煙道は煙突が設置された機械室内のボイラーの排気を煙突に送るもので、市によれば、2004~2005年ごろにボイラーの使用を停止したため配管を切断。機械室側からふたをした。その結果、煙突に接続する金属製の円筒管がコンクリート内に残った。

ようやく実施された専門家による調査で、改めて工事が不適正だったことが明らかになったわけだが、市は今後どのような対策を講じるのか。

6月22日の「家族の会」との話し合いで、市は市議会で説明したのと同様に市職員の講習体制を強化する方針を明かした。だが、つまるところ、講習を実施して、以前よりも「気をつける」だけにすぎない。違法工事を繰り返したあげくの対策が本当にこの程度でよいのか。

上記の話し合いでこの件を追及してきた「家族の会」の古川さんはこう市に要望した。

「市職員を教育しますというだけではすっきりしない。(市の対応が)どうしても信用できない。当初から求めてきたように第三者による行政対応の検証委員会を作って欲しい。そのうえで条例を定めて独自に規制を強化していただけたらと思う。このまま終わらせたら、また繰り返してしまうという気がしてならない」

◆注目される堺市の対応

市建築都市局の窪園伸一局長は「できるだけ誠実に対応したい。(対策は)調査者協会とも相談し、一歩ずつ進めさせていただいているつもりです。そこはご理解いただけたらと思います。全体の話のなかで、次どうしていくかというのはまだ市としてまとまってない。(検証委員会や条例の要望は)持って帰って議論したい」と答えるに留まった。

この間の市の対応は誠実にはほど遠いものだった。そうした経緯からすれば、第三者による徹底的な行政対応の検証もなく、同じ問題を繰り返している現状で、教訓化されるとは考えにくい。

市は近く提出されるという最終報告を受けてどのような対応をするのか。2度にわたるアスベストの不適正工事により、堺市の自浄能力が3度問われている。

201935日訂正】
当初最初のページに記載していた2枚の写真に誤りがあったため、写真を差し替え訂正いたします。

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