土砂くずれで全壊した家屋(広島県呉市両城で撮影・栗原佳子・新聞うずみ火)

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◆主要道路や電車も寸断

未曽有の災害となった西日本大豪雨。7月中旬、新聞うずみ火編集部では、矢野が愛媛県大洲市を、栗原が広島県呉市を訪ねた。被災現場を報告する。(矢野宏、栗原佳子)

14日朝、栗原は広島港からフェリーで呉市に入った。広島県南西部に位置し、県内では広島市、福山市に次ぐ23万人が暮らす。土砂災害により主要道路の大半やJRの鉄道網が寸断され、市全体が「孤立状態」に陥った。

11日に国道31号の広島―呉区間が開通したが、激しい渋滞が予想され海路を選んだ。フェリーで片道45分。海岸線の山々には、幾筋も土色の亀裂が入っていた。呉市内では14日までに23人の死亡が確認され、少なくとも3人が安否不明となっている。

呉市広地区の宮内秀佳さんの自宅は浸水を逃れたが、周辺はまだ断水が続く。「この1週間、広島市内の職場に泊まり込んでいます。2度ほど船で帰り、水汲みしてとんぼ返りしました」。家族が使える水を少しでも残したいという。広島市から呉市にのびる送水管に土砂が流入するなどして市内の大部分が断水。14日は一部地域で1週間ぶりに給水が再開したが、広地区全体では、まだ復旧に時間がかかりそうだった。

◆避難指示は出されていたが、90歳の母、簡単に動けず

大野喜子さんは同じ広地区の谷沿いの集落に暮らす。「6日夜は地震かと思うほどの降りでした」。避難指示が発令されたが、向かいには90歳の母もいる。簡単には動けなかった。

近くを流れる黒瀬川は濁流に。もう少し雨が長引いていたら被害は必至だった。目の前を走る国道375号は土砂崩れで通行止め。断水が続き、炎天下、給水車に並ぶ生活が続く。「でも私は被害がありませんでしたから……」。

この日、友人2人を見舞う大野さんに同行させてもらった。夫が朝、収穫したという夏野菜を3箱、トランクに積み込み、市街地へ向かう。30分あまりが過ぎたころ、フロントガラスが茶色っぽくかすんできた。浸水したJR安浦駅周辺だった。

避難所にもなっている「まちづくりセンター」で野菜を降ろす。入口にはペットボトルや消毒用品、衣類などが分別して置かれている。屋外のテントには切り分けたスイカと一緒に泥出し用の土嚢が並んでいた。

土ぼこりがたちこめるなか、周辺の商店や家屋で泥出し作業が行われていた。一帯は、野呂川と支流の中畑川があふれ浸水。6日夜、上流の野呂川ダムに決壊の恐れがあり、通常の3倍以上の放流が行われたと報じられている。

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