移動する人々も通行証の検閲を当然予期しているから、座席の下に潜り込んだり、列車が止まっている間に窓から飛び降りて取り締まりを免れる場合もある。

たまに列車の屋根に登って取り締まりを免れようとする人もいるが、列車が駅に停車すると、今度は駅での取り締まりを逃れるために屋根から降りなければならない。

列車は主に平壌―豆満江、平壌―清津、平壌―穏城(オンソン)、平壌―茂山(ムサン)を利用して清津市まで行く。199495年から列車ダイヤは麻痺状態で、数日~1週間発車を待つことはざらだ。

承認番号区域の地図(アジアプレス)

 

◆道路を往く場合

列車を使わない場合には道路を通って北上する。

「車が来ると、タバコなどを手にかざして振ります。乗せてくれ、乗車賃だという合図です。けれど、北朝鮮にはめったに車が走っていませんから、運が良くて数時間、場合によっては道で23日待っても自動車に乗れないこともあります。車に乗れるまでは歩くしかない」(98年に脱出した平安南道出身、30代の男性)

清津市までの途中、咸興(ハムン)、吉州(キルチュ)付近では「10号哨所」と呼ばれる検問を通らなければならない。哨所とは検問所のことで、なかでも「10号哨所」は保衛省が管轄する検問所であり、通行人の通行証及び自動車運行証を検査する。北朝鮮全域の主要道路に設けられ、取り締まりが厳しい(国境地域にはもっと多い)。通行証のない者は「10号哨所」を前にして車を降り、山道や畑のなかを通って検問を迂回して避けなければならない。
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