◆中国での逮捕
北朝鮮難民たちは、中国の地に無事に辿り着けたと安堵していられるのも束の間のことだ。すぐさま、今度は中国当局の摘発に神経を使うことになる。
豆満江・鴨緑江を渡って間もないのに、国境沿いの村で逮捕されたり、内陸の市街地に移動するバスが検問に引っかかるケースがある。また、北朝鮮に近い都市部では、世帯ごとに公安(警察)がしらみつぶしに回るローラー作戦によって摘発されたり、朝僑(中国に在住する北朝鮮国籍の朝鮮人)ら一部住民たちの密告によって逮捕されることも少なくない。コチェビと呼ばれる浮浪児が、野宿している橋の下を、警察が急襲して逮捕することもある。
逮捕されると、警察、あるいは辺防部隊(国境警備隊)の拘置施設で取り調べを受ける。まず身体捜索をして一切の個人の持ち物はいったん没収(返却されることが多い)、ベルト、靴の紐は自殺防止のために取り上げられる。
調査は名前、生年月日から始まって中国に来た目的、経歴、家庭環境、渡河地点など。ここで一週間ほど拘置された後、辺防部隊が護送して北朝鮮に移管される。一週間ほど拘置される理由は一日に2、3人ずつ捕まってくる難民たちをまとめて一度に強制送還するためだ。逮捕された難民の数が3、40人ほどになると、幌付き軍用トラックの荷台に乗せて国境に送る。難民の取り締まりが厳しくなった2001年からは、2、3日の拘置の後すぐに送還するようになったともいう。
北朝鮮への身柄の移管場所は逮捕地に近い地域の国境連絡橋だ。創刊されるのは中国側の和龍、龍井、図們、琿春、長白などおよそ十ヵ所だと推定される。
98年以前は、中国の辺防部隊員たちは逮捕した難民を殴打することはあまりなかった。むしろ、北朝鮮の惨状をよく知っていて「腹が空いただろう」と差し入れをしてくれることも多かったという。しかし、次第に難民の数が増え、また難民の中に殺人や強盗などの重犯罪を犯す者が、ごく少数だが現れるにつれ、逮捕した難民に暴行を加えることが珍しくなくなったという。
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