黒龍江省の寒村に潜伏中の60代後半の男性。その後逮捕され北朝鮮に送還された。生死は不明だ。2001年1月に撮影石丸次郎

◆「コッパック」と呼ばれる強制労働キャンプの内部

1~2週間ほどで調査が終わる。この時点で拘束を解かれるのは、大部分が子供とその母親、また子供を家に置いた女性と年寄りの女性だ。

政治性ありとみなされたものは論外だが、他の大部分は労働鍛錬隊(難民たちはこれを「コッパック」と呼ぶ)に送られる。この「コッパック」がまた北朝鮮人にとって恐怖の的なのである。

収容されるのは、中国逃亡者をはじめ、職場を放棄している者、職場や地域の思想講習をサボり続けた者などだ。運動場を走らされたり、ポンプと呼ばれるスクワットをやらされたり、金日成・金正日父子を称える歌を歌わされたりという課業と、管轄する人民保安部の畑を耕したり、薪拾い、山菜採りなどの労働を強いられる。

前出の20代の女性は、「保安部の畑の肥やしにするため、公衆便所の糞尿さらいを素手でさせられた」と証言していた。

早朝、強制労働現場に向かうためにコッパック=労働鍛練隊から出てきた収容者たち。2008年10月海州市で撮影シム・ウィチョン(アジアプレス)

収容者を監督するのが、同じ「コッパック」の古株の収容者で「班長様」と呼ばれる。管理の仕方は前述の集結所と似ている。男女年齢に関係なく容赦なく殴打を繰り返すので、恐怖と怨嗟の的になっているのは想像に難くない。

「班長様」は現場監督をしっかりしないと、人民保安員から酷い仕打ちを受けるので、点数稼ぎもあって、任務の遂行に極めて積極的なのだという。だが、あまり熱心な「班長様」は恨みを買って、娑婆に出たあとに復讐されることもよくあるらしい。前出の白さんの証言同様、「コッパック」も不衛生で、満足な食事を与えられず、死人が出ることもあるという。

この後、白さんが語った集結所に送られるのが一般的だ。集結所の後は、釈放されるか、管理所(政治犯収容所)、教化所などに送られる。
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